最近の趣味は髪の毛を刈ることで、毎晩、風呂に入るたびにバリカンで削っている。芝刈りみたいで楽しい。1ヶ月もやっていると刈るところがなくなり、ついにはT字型カミソリで剃るに至る。いろんな剃り方を試しては子どもみたいにはしゃぎ、ついには丸坊主と紙一重のところまでくる。きみはバカかね。
しかし楽しいのである。刈りたての頭を撫でるとゴリゴリざわざわみたいな微妙な感触が気持ちいい。刈り揃えたばかりの芝生みたいな。柔らかくて、硬い。癖になる。思わずにやける。危ないひとですね。髪の毛撫でてにやついてる。これは触ったらわかると思う。誰にも触らせてあげないけど。知りたければ自分の頭でやるべきだ。
もう二度と美容院に行く必要はない。もっと早くから自分でやるようにすればよかった。昔から散髪は好きじゃなかったから。いちばん嫌なのは話をしなきゃいけないということで、どっちがお客さんかわからないくらい気を遣い、話題を見つけ、相手に飽きさせないよう四苦八苦する。終わったあとはどっと疲れが来る。そういう性格なのですね。ほっときゃいいときでも相手に合わせようとしてしまう。美容院のことを考えるだけで憂鬱になり、そのうち髪はどんどん伸びてきて外見まで鬱陶しくなる。でも行かなきゃ。やつに我慢して、表面上はにこにこして、退屈な時間を退屈じゃないように感じさせないと。「あなたも面倒でしょうが、わたしにとっても拷問なんです」なんて口が裂けても言えない。
今は心の底から楽しい。バリカンでじょりじょり削る。鏡のなかから坊主頭の知らないやつが笑いかける。誰やねんこいつ。丸坊主やないけ。
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