最近好きなのは釣りなのです。一人静かに釣り糸を垂れている。釣れたって、釣れなくたって構わない。頭を空っぽにして浮きを見つめている。その時間を愛している。
さすがにこれだけ長いこと生きてきて、自分を見つめていると、自分に関しても多くを知るようになる。僕の欠点は考えすぎるということ。それを美点に転化することもできて、たとえば気配りとか、あるいは集中力とか、知識欲の燃料にもなっていくわけだけど。でも疲れるのですね。余計なことをくよくよと考えてしまう。過去に囚われてしまう。些細な過ちで他人を許せなくなってしまう。自分のなかに怪物が棲んでいるよう。なんとか、怪物を御したいものだと努力してきたわけだけど。
そういう自分から自由になる方策が、釣りなのです。そこにあるのは海との対話だけ。浮きを見つめて、竿を操って、魚のありかを探っていく。無心になれる。とくに魚がかかったときなんかはね。子供に戻る。有頂天。魚とのやり取り以外、なにも目に入らない。ほかに代えがたい興奮。高揚感。小さな自分を忘れている。
いいのかな。こんな快楽を自分に与えて。かつてはヨガを愛していたわけだけど。今ではそれと同じくらい、釣りを愛しています。恥ずかしながら。それでいいのかな。愛する対象が増えるのは素晴らしいことだ。この世がよりいっそうの輝きを帯びる。
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