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夏の終わり


 涼しい日が続いていて、夏も終わりなのかな、とさびしく思う。冷静に考えれば、この島は年じゅう夏みたいなものだし、しばらくしたら快晴、青空、海水浴、なんて日々に戻るのかもしれないけど。しかし気分的にはね。お盆を過ぎたら、盛りは過ぎているし、蝉は消えるし、日は短くなり、夏休みも終わりに近づく。宿題が山のようにたまってる。ポスターも描いていないし、課題図書も読んでいない。日記帳なんてランドセルから出してもいない。学校が始まっちまう。ああいやだ。  今年の夏。夜の海で泳ぐのが日課でした。夜光虫がたくさんいました。みなさんご存知でしょうか。水をかくと彗星のごとく無数の光がきらめくのです。自分の手が光の軌跡を生み出すような。これほど美しいものは滅多に出会えない。夜の海に出て、羊水みたいな温もりに包まれて、海のなかの光や、沖合の船の灯、空にまたたく満天の星を見上げる。ここは楽園。  パイナップル。何個食べたろう。旬の時期は一日に一個みたいな勢いでざくざく切ってた。ここへ来るまではタイの神聖なるパイナップルが最高峰だと思っていたけど、いやいや、石垣島のパインも負けてはいません。甘さ、瑞々しさ、果肉の食感。いくら食べても飽きない。一切れ口のなかに放り込むとパインの国へ飛ぶ。おかげでバンコクのフルーツ屋台のおっちゃん並みにパイナップル・カッティングがうまくなったし、いつも指先にパインの匂いが染みついてた。蝶や蜂が甘い香りに誘われて僕の手に寄ってきそうな。それもいいよね。蟻がたかったら困るけど。しかしこれもまた、過去のものとなり、ゆらてぃく市場に山のように積まれていたパインは今いずこ。  うれしいのは連続フル出場を続けてるってこと。どんなに肉体的に厳しくても、パンチドランカーみたいにふらふらになっても、自分自身が率先してやるというのが僕のスタイルなので。高みから指図するだけで汗一つかかないというのは主義に反する。自分でやらなきゃ流れが呑み込めないし、何より生徒さんに申し訳ない。毎回が祈りのようなものなのだ。真剣さの欠如した祈りなんて神様に届かない。お客様にも愛想を尽かされてしまう。いい練習になりますしね。こうして少しずつ、僕自身も技の精度を高めていくわけです。  きついときもありましたけどね。貧血気味で倒れそうになったり、熱中症で頭がパーになって何していいかわからなくなったり。でもなんとか、夏を乗り切りました。というかいつのまにか夏が終わりかけてる。やり残したことはありません。毎日ベストを尽くしました。たまった宿題もない。8月31日に泣くこともない。


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