夕暮れの漁港をぶらついていて、あまりに気持ちよさそうなので飛び込んで泳いでいた。漁師のおっちゃんが声をかけてくる。「あぶないぞー。ハブクラゲいるぞー」。そこらじゅうにうじゃうじゃいるらしい。慌てて陸へあがる。しばし夕陽を眺める。海が誘惑してくる。誘惑に負けて、再び泳ぎ始める。刺されたら刺されたでしょうがない。命までは奪うまい。だてに世界中を旅してきたわけじゃない。ガンジス川のばい菌や、アマゾン川のピラニアと一緒に泳いだ経験もある。 いやはや、気持ちいいのである。南国の海にぷかぷかと漂う。水平線に夕陽が沈む。耳に届くのは岸辺を洗う波の音。ヨガより気持ちいいことを見つけるのは難しいけど、これはその一つだと思う。肉体が喜ぶ。心が清められる。生きててよかった。どこまでも自由。海を泳ぐ魚みたいに。ハブクラゲがいようが何だって言うのだ。そんなものを怖がってちゃ何もできない。 あるいは幸運なのかな。一発で悪魔の触手に愛撫されて撃沈しちゃうひともいるのだろうし。石垣島に感謝。今日も一日、素晴らしい旅路を授かりました。ハブクラゲさん、見逃してくれてありがとう。