うちの隣には変なおっさんがいる。「こら。こおら。ああっ! イタッ!」。延々とそういう喚き声が聞こえてくる。やつは何をしているか。犬と話しているのである。僕がそれを確信したのは次のような言葉が漏れ聞こえてきた時だ。「おまえ今カミカミしただろう」。
石垣には変なやつが大勢いる。インドといい勝負ではなかろうか。理性や常識のたがが外れているというか。個人的には親近感を抱くけど。みんながみんなルールに縛られて同じことをしていたらつまらない。日本人ってそういう約束事を子どもの頃から叩き込まれますからね。まわりに合わせろ、目立つな、自分の意見を持つな。実際、出る杭は打たれるわけだし。打たれて、さらし者にされ、のけ者にされる。まわりを窺って生きるようになる。どこに行ってもグループの輪に入り、レールから外れることを恐怖し、運命のいたずらによりて一人になってしまったら途方に暮れる。何をしていいかわからないし、何が大切なのかも見当がつかない。自分に自信を持てない。空っぽの人間、紙のように薄い存在と化してしまう。判断基準を周囲に頼ることが前提となっている。組織の庇護と命令がないと生きていけない。自由がむしろ耐え難い重荷となる。
しかし石垣には本物の反逆者がいます。あらゆる制約から自由。我が道を行く。一切の疑念を抱かない。興味をお持ちの方は新川の教室へお越しください。15時~16時のレッスンで聞ける可能性が高いです。平日、週末を問わず、庭に出て真剣に犬と対話しています。犬はどうやら噛むことで意思を表明しているようです。常識的に見て、理性の境界を超えるにはまだ早い時間ですが、たぶんそれくらいの時間じゃないと焦点を一つに合わせていられず、16時を過ぎると死線をさまよう状態となるのでしょう。
年季の入った酒飲み。あなたは自由人だ。