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ビル・エヴァンス・トリオ


 ビル・エヴァンス・トリオ。完璧な組み合わせだと思う。これ以上の三人は考えられない。誰が欠けてもだめだし、ソロだと意味を失くしてしまう。

 ビル・エヴァンス(ピアノ)、スコット・ラファロ(ベース)、ポール・モチアン(ドラムス)。代表作はなんといっても『Sunday at the Village Vanguard』。カクテルグラスが触れ合うようなおしゃれな音楽。ピアノが洒脱に誘いかけ、ベースと一緒に踊り、ドラムスが絶妙の間合いで相槌をうつ。夢みたいな瞬間が止むことがない。親密さ。意外さ。華やかさ。このアルバムへの賛辞は惜しまない。彼らの絶頂期。でもこの三人がそろったのは、この時期だけなんだな。

 同じ顔ぶれがそろうことは二度とないのかもしれない。一夜限りの完璧な組み合わせ。誰が欠けてもだめで、もちろんソロだとトリオほどのパフォーマンスはできっこない。別にカルテットでもクインテットでもいいんだけど。あるいはデュオだって。大事なのは、一回限りの完璧な組み合わせってこと。ジャズみたいな相互作用。ライブセッションで流れを組み立てていく。そこには生まれた瞬間に消えていくような儚さがあるのだろうし、だからこそ得られる美質もあるのだろう。心の中にだけ残る余韻みたいな。細かいことは忘れちゃっても、いい時間を共有したって思いだけは残る。別の顔ぶれで同じ流れを繰り返したとしても何かが違う。あのときのほうがよかったな、と。二度と繰り返せない夏の一日みたいな。一期一会。

 みなさんも音楽に参加しているわけで、ぜひ自分の存在を過大評価してほしい。「わたしがいなきゃ始まらない」と。実際にそうなのです。ビル・エヴァンスやスコット・ラファロ、ポール・モチアン。このあたりは好きなアーティストを思い浮かべてくれたらいい。完璧な組み合わせ。欠かすことのできないピース。


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